ここではPS4版の「千里の棋譜~現代将棋ミステリー」のレビュー、感想を書いていきたいと思います。
「千里の棋譜」は以前スマホ版でプレイしたことがあるんですが、その時に追加シナリオの答えが分からなくて製作者サイドにメールを送った所、非常に親切に返信を頂いたことがあるのでとても印象に残っているゲームでした。
そして今回晴れてボリュームアップしてPS4版でも千里の棋譜が発売されるということで、早速ダウンロードしてプレイしてみました。
なるべくネタバレなどはしないように心掛けますが、説明上多少ネタバレの要素を含んでしまうこともありますのでご了承ください。
目次
とにかく秀逸なストーリー性!
アドベンチャーゲームというと、様々な人物の思惑や謎が交錯しながら物語が進んでいくのが醍醐味のひとつかと思いますが、そういった意味ではこの千里の棋譜はよく出来てるんじゃないかなと思います。
物語は「第一部」「第二部」そしておまけのシナリオがひとつ用意されていますが、第一部は将棋界に密かに存在する「千里眼」を巡る争いになります。
この千里眼は「手にした棋士の人生そのものを狂わせる」と言われているものですが、千里眼とは一体何なのか?そして千里眼を狙っている人物は誰なのか?なぜその人物は千里眼を必要としているのか?
このあたりが話の中心になってきますね。
そしてこの千里眼の謎を紐解くヒントがあるのが50年前に行われた、将棋界の覇権を争う「真剣師VS当時のプロ棋士」の舞台。
(真剣師とは賭博将棋で生計を立てる者のことですが、真剣師は昭和の時代くらいまでは実際に存在していて、小池重明氏などは伝説的な強さだったと言われています。)
この50年前の勝負で一体何が起きたのか?
それと同時に現代の将棋界はAIの台頭により、「AI対名人」の対局が行われようとしています。
しかし、対局直前になって名人のまさかの失踪。
なぜ、名人は対局直前になって失踪したのか?事件性はあるのか?「AI対名人」の対局は実現するのか?
そこに「千里眼」はどうやって絡んでくるのか?
これらの謎が複雑に絡みついて最後はひとつのエンディングを迎えます。
この「第一部」だけは以前スマホのアプリでプレイしたことがあるのですが、久しぶりにやってみてもやっぱりよく出来たストーリーだなと思いましたね。
そして「第二部」ですが、第二部はスマホ版には無かった追加シナリオになります。
主人公で、フリーライターの一ノ瀬歩未の幼馴染、長野圭が在籍する奨励会三段リーグ。
この三段リーグの上位2名が四段に昇進することが出来、四段に上がるという事はイコールプロ棋士になれるということです。
そしてこの三段リーグに突如現れたのが最年少の天才棋士(恐らくモデルは藤井聡太さんだと思われます)
最年少の天才棋士は三段リーグでも破竹の勢いで白星を重ねますが、三段リーグ突破目前にして突如、奨励会を退会し、失踪してしまいます。
一方、将棋連盟のスポンサーであるサイバーテレビは、23年前に行われた「幻月名人戦」の再現企画を目論みます。
主人公の一ノ瀬歩未もこの企画に参加することになるのですが、実はこの過去の名人戦にはいくつもの謎が隠されており、その謎を解明しようとする者と、なぜかそれを阻止しようとする者とで攻防戦が繰り広げられます。
そして第二部のキーワードは「神隠し」
すこしオカルトチックな印象をもつかもしれませんが、この神隠しが最年少天才棋士の失踪や幻月名人戦とどう関係してくるのか?
中盤から後半に進むにつれ場面が急展開していきますが、最後は非常にロマンを感じるような終わり方になっていて、個人的には凄い好きなストーリーでした。
ゲームを彩る個性的なキャラクターと場面に合ったBGM
千里の棋譜には、実在する棋士の方も登場するのですが、この棋士の方達がまた良い味出してるんですよね。
実際に棋士の方ってイメージとは裏腹(?)に、面白い方が多いですよね。
高橋道雄九段 ※本作はボイス付きですが、声に関しては実際の棋士の方ではなく声優さんが担当しています。
棋力はもちろんの事、アニメの方にもかなり精通されていて、その筋ではかなり有名な棋士です。
ゲーム内でもアニメオタクの一面をふんだんに発揮していて、たまに中二病的な発言をしますが、実はその中にヒントが隠されていたりとこのゲームには必要不可欠なキャラクターです。
シリアスになりがちなアドベンチャーゲームですが、高橋九段のキャラクターが良い意味でアクセントを付けてくれていると思います。
香川愛生女流棋士
ゲーム内では割と姉御肌的なキャラクターで描かれていますが、これは実際の香川女流棋士の愛称が「番長」だからかな?(;^_^A
香川女流棋士はYOUTUBEなどで将棋の普及活動をしていて、初心者~中級者向けに分かりやすく説明してくれている解説動画などをアップしているのでゲームをやった後はチェックしたくなるかもしれませんね。
というより、ゲームのキャラクターに負けず劣らずの美人さんなので男性陣はチェックしておいた方が良いですよ(笑)
加藤一二三九段
「ひふみん」の愛称で人気の加藤一二三九段も登場します(そっくりです(笑))
まあ、ゲーム本編には登場しませんが、顔や喋り方などはかなり特徴を掴んでますね(ただし、残念ながらボイスは発生しません)
加藤九段って、愛らしいキャラクターで見てるだけでほっこりしてしまいますが、現役時代は「神武以来の天才」と言われ、実は生ける伝説ってところが凄いですよね!
将棋を指しているシーンのBGMがカッコイイ!
このゲームにも様々なBGMが用意されていますが、個人的には将棋対決をしているシーンのBGMが好きでした。
特に局面が変わった時に変化するBGMは、戦いの臨場感をグッと増してくれます。
将棋対決のシーンは基本的には見てるだけなのですが、それでも「どっちが勝つんだ?」みたいなハラハラドキドキ感は半端じゃないです。
他にもオープニングなんかも健やかだけどどこか物憂げな印象的な曲ですし、音楽的にもかなり力を入れてるんじゃないかなという印象を受けました。
将棋を知らない人でも楽しめて、将棋を知っている人はより楽しめる
本作は将棋を題材にしているゲームということで、将棋の専門用語がガッツリ出てきます。
僕の場合、駒の動かし方やルール、多少の戦術だったら知っていたので、割とスムーズに読み進めることが出来ましたが、全く将棋をかじった事のない方でもその辺はあまり心配ありません。
というのも、主人公である一ノ瀬歩未が殆ど将棋の事を知らないという設定なので、ゲームの中で将棋を教わりながら覚えていくという流れになっています。
他にも「用語集」があり、分からない言葉はすぐに調べられるようになっているので、プレイしている人も同様にゲームをしながら将棋を覚えられるようになっている感じがしますね。
さすがに対局のシーンなどで「この一手は凄い!」なんてことまでは分からないかもしれませんが、逆にその辺は将棋を知っている方なら楽しめるのかなとも思います。
そもそも本作は、間違いなく将棋を知らない層を取り入れたいという意欲を感じるので、将棋を知っている人はもちろん、将棋を知らない人にも丁寧に配慮が施されたゲームになっていると思います。
アドベンチャーゲームの難易度としてはかなり甘め
本作は基本的にテキストの途中に現れる選択肢を選んでいくことで物語が進んでいきます。
一応選択によってはバッドエンディングになってしまうこともありますが、直前からすぐに再開することが出来ますし、仮にバッドエンドを迎えてもトロフィーが貰えるので殆ど問題なしです。
それに、話が分岐したりすることもないので、まず行き詰まることはありません。
まあ、良く言えばテンポの良いゲーム展開と言えるかもしれませんが、逆に言うとゲームの中でガシガシ推理していきたいという方には少し物足りなさを感じるかもしれません。
ただし、意外なところに犯人のヒントが隠されていたり、ミスリードなども結構あったりするので、頭の中で推理する分には結構楽しめるかと思います。
千里の棋譜~現代将棋ミステリーをプレイしてみた感想【PS4版】のまとめ
千里の棋譜をプレイしてみた感想としては
アドベンチャーゲームとしては簡単だが、ストーリーは非常に面白い!
という印象でした。
ちなみに謎解きという面では、おまけのシナリオが一番謎解き感がありました(笑)
ゲームのボリューム感も結構あって、クリア時間は30時間弱でしたので、将棋のことを学びながらじっくりプレイするには非常に良いゲームだと思います。